
泰順は、浙江省の最南部の福建省との境目の地域だ。
泰順県の町は温州の西南150キロくらいのところにあるが、この間にこの地方独特の橋が数多く存在する。
この地方の端の特徴は、基礎を釘を使わずに材木だけで組み、橋の上に屋根がついてて雨宿りができる形になっている。
明や清の時代に多く建てられており、「木拱廊橋」というらしい。
それぞれが立派な橋だが、町中ではなく辺鄙なところにあるものも多く、バスも走ってないところにもあるのでかなり回りづらい。

こういう風に、泰順県近辺に30いくつもの橋が分布している。
沈海高速の泰順出口から泰順県城まで、省道331号が通っており、この道路が制限速度70キロくらいのきちんと舗装された道路で、この道路を軸に分岐にちょくちょく入って観光する形になった。
まずは、「泗渓鎮」というところに行った。
泗渓鎮はほぼ省道331号沿いにあり、比較的交通の便がよい。
查看大图この泗渓鎮には、「渓東橋」と「北澗橋」という2つの有名な橋がある。
交通の便もよく、お店も立ち並んでいて、観光客もそこそこいた。

渓東橋。廊橋の標準的なデザイン。
丸太を両岸に斜めに挿し、さらに縦横に丸太を組んで橋を渡す。八の字になっているのが特徴。

橋の中はこういう形になっている。
梁にも装飾が施されている。
板がひいてあり、人が座れるようになっている。
昔はこういう橋が人々の交流と憩いの場となっていたようだ。

橋の真ん中には神様が祭ってある。
地味ながら装飾がちらほら施されていて、こういうド田舎の言わば公共施設でもデザインに凝るところを見ると、中国の歴史は深いと感じるし、同時に新中国の建物ってどうしようもないなと思う。

北澗橋。泗渓鎮にあるもう一つの橋。
ここは観光客が多く、泰順界隈で一番の観光スポットのようだ。

橋の入り口。みやげ物屋がそこそこ出ていて、若干にぎやかだ。
昔はこの橋の上にも屋台が出て、祭りのときには人形劇なんかも催されていたという。
橋を渡った先には「廊橋文化展庁」があり、そこで中国の廊橋文化を学べる。

中の様子。橋の模型がそれぞれ飾られていて、なかなか面白い。
一階のホールでは廊橋に関する講演を一日に何回もやっているようだ。
この泗渓鎮は泰順の廊橋観光のメインのような気がする。
この後、三条橋と毓文橋を目指した。
この2つの橋は、同じ道路の上にある。
查看大图バスで行くには、泗渓鎮からまず三魁鎮まで行き、それから洲嶺行きのバスに乗り換えないといけないらしい。

三条橋の目印。
ここから脇道に入り、1キロ以上の道のりを進む。

峠まで行くと車道も途切れ、こんな石畳の道をずっと下る。

石畳の道を500メートルくらい下ると、三条橋にたどり着く。
周りには山と川以外何もなく、なぜこんなところにこんなに立派な橋を作ったのか、まったく不思議だ。

そばで見ると、泗渓鎮の2つの橋よりもだいぶ素朴になる。
しかし何でもこの三条橋は泰順地区で最古の廊橋らしく、こういう人気のない渓流で風雨に晒され浅黒くなってる感じがすごくよい。
その後で、毓文橋へ行った。「竹洲線」をさらにずっとまっすぐ行くと「洲嶺郷」という集落に着き、その南側にある。

これが毓文橋。アーチが木を組んだものではなく、石を積んで作ってある。その他、廊が三層になっているのが特徴。欄干も中国らしいデザイン。

橋の中は平坦でシンプル。

橋の両岸は山に囲まれていて、西側には社廟がある。橋の北は盆地が広がり、南は渓谷になっている。
橋のデザインもいいが、周囲の環境も、傍の大木の葉が一つもない枯れ切った感じが、侘び寂びを感じさせ、とてもよい。

橋の上から、北側の平地を撮影。畑もあり、人家もたくさんある。

毓文橋は、橋そのもののデザインも美しいが、周りの木の感じや山に挟まれている環境も合わせてとても雰囲気があるし、盆地の最南端に配置されているところも、昔の人にしてみると何か特別な意味があったのかな、ということも感じさせ、このとき回った橋の中で一番好きな橋だ。

この日は毓文橋で観光を終え、泰順県城の旅館に泊まった。
泰順県のバスターミナルの隣にあるこのホテルは町の中でもランクの高いホテルで、インターネットもできる。168元。
泰順県の町中には廊橋はないようだ。
近くには、「仙居橋」というのがある。泰順県バスターミナルから、「童東線」という道路を北に10キロくらい行ったところにある。
路線バスも出ているようだ。

仙居橋のバス停。奥を走る黄色い車が路線バス。

仙居橋。やはり周りは山と河と道路しかない。
この橋は、泰順界隈で最も長く、建設されたのも15世紀とかなり古いらしい。

この辺にはトレッキングコースがあるらしい。一周15キロくらい。いつか回ってみたい。
この後、筱村に行った。筱村には、廊橋と古鎮がある。
筱村は、泗溪鎮の北西30キロほどのところにある。

これは、文興橋。
筱村の北西、白岩坑トンネルの手前に、この文興橋はある。
この橋の手前は田んぼが広がっていて、とてものどかだ。

この橋の大きな特徴は、左右非対称なことだ。
橋の左側と右側で、橋の傾きが違う。

文興橋の入り口。屋根や外壁なんかもしっかりと再建されている。

文興橋の中。こちら側はけっこう急になっている。

反対側。こちら側は比較的緩やかになっていて、左側と右側で傾きが違うのが実感できる。

中心には神棚が設置されている。この橋の神棚が一番手入れされていた。

文興橋の周りは山と川以外に田んぼもあってまたのどかな感じが別の橋と違う。
総じて、今回回った泰順の廊橋の数々は、どれもそれぞれ個性があって、思っていたよりもなかなか見ごたえがあったかな。
しかしそれぞれの橋が離れているので、観光するのはけっこう大変だった。
ほとんどが山道なので、自分で運転してても集中を持続させるのと体が左右に振られるのとでけっこう疲れる。
加えて、がけ崩れとか工事中とかで通行できないところなんかもあって、実際の距離よりすごく時間がかかる。
それから、筱村には徐岙底古村という観光地があり、そこにも行った。

古村落入り口付近。
素朴な土壁と石垣が特徴的な村。人の気配はない。

ずっとこのような家々が続く。とにかく人の気配がなく、この村で人が暮らしているのかどうかよく分からない。

ようやく人が。屋根を修理しているようだ。
しかしこの村は、窓やら扉やらが壊れっぱなしの家ばかりで、電信柱はあるけど、子供なんか一人もいないし、生活感が感じられない。

文元院。この集落で一番立派な建物。18世紀に建てられたらしい。

四合院の立派な家。その昔、科挙に合格した人が出たらしい。
一応人が住んでいるようだ。しかし生活感はないし、観覧用に整備されている様子もない。

天井の装飾もさすがに凝っているが、メンテナンスが行き届いてない。
全体的に、住んでいきたいのか、観光地にしたいのか、よく分からない村だ。
もしかしたら今観光地化を目指して住民を立ち退かせている最中なのかな、という印象を受けた。

周囲の山から集落を撮影。
山に三方を囲まれた狭い土地に家がたくさん建ち、山から流れてくる小川で生活用水等をまかなっている。
こういう地形は集落が形成されているところが多い。日本の京都なんかもそうなのかな。
というわけで、廊橋はどれもすばらしかった。
観光は相当しづらいが。
本当は菜の花を見たくて、ネットでは泗渓鎮の廊橋付近にたくさんあるという情報があったから行ったのだが、何にもなかった。
それで、帰りは泰順県から県道228号を北に進み、景寧畲族自治県から、雲景高速という高速道路に乗った。
泰順からこの辺は茶業が盛んらしく、途中で見える山々は延々と茶畑になっていた。

景寧の町中にある、寒山橋。きれいに再建されている。橋の外壁には電飾が縦横無尽に施されている。
この町は今建築ラッシュに沸いているらしく、こんな片田舎に関わらず、高層マンションがたくさん建てられている。
こんな田舎になんでこんなにマンションが必要なんだ、と不審に感じる。
お茶がそんなに儲かるのか、それとも少数民族にお金をばら撒かないといけない政策でもあるのか。

雲景高速の入り口。新しく建設された道路らしく、カーナビの地図には出てこなかった。
やはり路面にはゆがみがなく、とても走りやすかった。