2015年12月18日

居留許可に関して公安に処罰された件

8月に新しい職場に入社しているのだが、ビザ関連の手続きが最近になってようやく終わった。
通常は、同市内の転職の場合は2〜3週間で終わるはずだが。
自分のいる業界が特殊で、労働部門で就業証の手続きを行う前に業界管轄の役所で特別な許可が必要で、そこで2ヶ月もかかったらしい。
何でも、上海で今年まだ2人しか許可が出されていないものを、職場の人たちで手を尽くして何とか許可してもらい、こんなに時間がかかったのだそうだ。
それに勤務先の担当の怠慢も重なり、合わせて4ヶ月以上もかかってしまった。

公安には職場のボスが裏から手を回して、事情説明と反省文を提出して事なきを得ようとしたが、流石に4ヶ月の遅延だとそうはいかないようで、出入国管理局の3階の窓口とは別室の取調室みたいなところで、事情を聴取された。
その部屋には熟年の小太りの警官が座っていて、こちらを威嚇するように表情を作ったり大きな動作を取ったりする。
一緒に行った勤務先の担当が、職場のボスの知り合いの公安幹部の名前を言ったが取り合ってもらえず、「一个犯法,一个違法」だ、などと脅された。
個人も会社も同等に処罰される、と脅しているんだろうが、こっちが外国人で心に響かないのは分かっててポーズでやってるだけにしても、その醸し出す小物感ばかりが目立って、こちらも表情を無にして対応するしかなかった。
そして、そもそも10日以内に変更手続きを行わないといけないし、不法滞在期間が3ヶ月以上になるのでここでは対応できない、別の場所で処罰を受けてもらう、といわれ、浦東の遥か南の住所を案内された。
その10日以内の変更手続きというのが初耳で、職場の担当者も聞いたことないという。
しかし今回は10日どころの話ではないので、次の行動に移った。

同日、その案内された「出入境管理事務室接待室」に行った。
建物の外で少し待たされた。すると背後から声をかけられ、振り返ると背の高いスラっとした男がパトカーの間を縫って歩いてきた。
吉川晃司似の、カジュアルなスーツ姿で開襟シャツを第2ボタンまで開けて木の数珠みたいなネックレスを首に掛け、腕にも木の数珠みたいな腕輪を2つ巻いた、背の高い渋い青年であった。
彼は「2時に待ち合わせしたのになんでこんな時間なんだ。」といいながら、ドアのパスワードを打ち込む。
それから入口のすぐ横の4人掛けの机が一つある狭い部屋に案内された。その間渋い表情はずっと崩さない。
彼は、話が通ってないのか、分からないふりをしているのか知らないが、初めから話を聞こうとし、どういう状況なのかを同行した社員が説明し、準備した資料を一通り見せた。
続いて、会社はどういう会社で、何の仕事をしていて、外国人は何人いて、前の会社はどこで、現住所はどこだ、というような内容について受け答えした。
結局は彼の一存でどうこうできる案件ではなかったようで、この件は一旦預かったので来週の火曜日にまた来い、ということになった。
同行した女性社員は、この警官の対応を無愛想だと受け取り、帰り道で悪口を言っていたが、どういう処分になるか分からない状況で笑顔は見せられない、というその警官の考えは分かるし、自分では対応できないから話をあまり聞かずに一旦帰らせる、という対応も理解できる。
自分も以前日本で似たような仕事をしていたためか、自らの怠慢を全く省みないその社員に頭に来てるからなのか、警官の方に同情的になった。

後日、再び「出入境管理事務室接待室」に赴いた。
今度は優しげな目をした快活な若者警官が対応した。
彼は、上の方から話は通っている、処分も500元の罰金ということで決まっている、と言い、さっそく書類を預かり、端末を開いて処理を始めた。
やはり会社の状況やら住んでいる場所やら仕事内容やらそんなことを話し、その警官の雰囲気もあり、聞き取りは和やかに進んだ。
同行した女性も調子に乗り、自分の会社は上海一大きな事務所だとか、転職してきたらあなたは立派に活躍できる、とか、高学歴だからなんとか就業証も取れただとか、こちらが恥ずかしくなるようなくだらないことを言い続けていた。
そんな無駄話を挟みながら、1時間あまりおしゃべりが続いた挙句警官が席を外し、いつまで続くのかな、と思ったら、何やらプリントアウトしてきて、それが3ページにも及ぶ自分の調書で、対話の中の必要な部分が尋問形式で全部反映されていた。
それで、その調書とその他の書類やコピーに延々とサインし、ようやく全部終わった。

それから、10日以内の規定その他について、警官に直接聞いてみた。
10日以内の規定は、以前からあるものの、最近になって厳しく適用し出しているということだった。
具体的な条文は、
『中華人民共和国出境入境管理法』(2013年7月1日施行)
第33条2項 外国人居留証の登記事項に変更が生じた場合は、登記事項に変更が生じた日から10日以内に、居住地の県レベル以上の地方人民政府の公安機関出入国管理機構で変更手続きを申請しなければならない。

それから、この法律には罰則規定も存在する。
第62条 外国人に次の各号に掲げる事由がある場合、国外に移送することができる。
(1)期限内の出国を命じられたが、所定期限内に出国しない場合
(2)入国を許可しない事由がある場合
(3)不法滞在、不法就労の場合
(4)本法又はその他の法律、行政法規に違反し、国外に移送する必要がある場合
第78条 不法滞在した外国人には警告を与える。情状が深刻な場合は、総額1万元を上限とし、不法滞在1日につき500元の罰金、又は5日以上15日以下の拘留に処す。


それから、10日以内には、勤務先変更の他、公安に届けた暫時居留証に記載した住所を変更した場合や、パスポートに記載された氏名に変更があった場合も、居留許可の変更事項の申請を行わないといけないということだった。
20151218.png
公安の出入国管理局のホームページから抜粋。
居留許可の届出事項に変更が生じた場合は10日以内に届け出ることがちゃんと載っていた。

というわけで、そんなこんなで500元の罰金で済んだ。
上の条文の1番安い罰金だ。
職場のボスが警官の直属の上司に繋がりが持てて、そこからのお達しで、最も軽い罰で済んだのだという。
今回は、法律を杓子定規に適用されれば拘留や国外退去の可能性もあっただけに、軽くて良かった、なんて考えがちだが、自分は何もしていないのにそもそも勤務先と行政機関の怠慢で罰金を科されるというのが道理に反する。
本当はお咎めなしにすべきだし、そもそも公安と就業許可を出す役所でちゃんと話し合ってこういう政策を進めるべきだ。
就業証だけだったら1ヶ月かからないはずだ、という前提だが、労働部門より前に業界の関連省庁の許可が必要になるともう間に合わなくなる、という事態には何の対応もせず罰金というのは問題がある。
しかし今回の場合は勤務先もノロノロしていて恐らく最初の1ヶ月くらい手続きを始めていなかったのもあり、3ヶ月以内だったら公安の対応もまた違っていたかもしれない。

今回の話をまとめる。
外国人が離職した場合、まずは10日以内に出入国管理局へ行き、離職による登記事項変更の届出を行う。外国人一人で行ってもいいし、新たな勤務先の者が帯同してもよい。必要書類は不明。変更の届出を行うと、その場で臨時の1ヶ月の居留許可を発行してくれ、その次に新たな就職先で就業証の手続きを行い、その後で居留許可の手続きになる。
就業証の手続きが終わるまでは何だかんだで2週間くらいかかるので、時間の余裕はあまりない。
その1ヶ月以内の臨時居留許可の期限を過ぎると、やはり不法滞在になる。
転職先を探し始めると、面接から採用までは日本より速いとは言え1ヶ月くらいはかかる。
だから、離職後に就職活動をする場合は、実質的には間に合わず、一旦国外に出なければならなくなる。

従来は、前の勤め先の就労ビザの期間が余ってたらそれを使えたが、今は大分厳しいようだ。
日中関係が悪いから日本人にだけ特別厳しい、なんて言う人も多いが、これは全体的な傾向で、強いて言うなら東南アジアやアフリカの人々に対してはチェックが厳しいらしいが、これも出稼ぎ不法就労が多いという経済的要因である。
中国の経済力が高まって出稼ぎの流入が多くなり、さらに大学進学率が高まり人材に余剰があるのに、爆発的成長も一段落して就職先の増加率は低い、というような要素がいろいろ合わさり、外国人の流入を抑制しよう、という流れになっているのではないか。
一方では、優秀な人材へのグリーンカード付与の条件緩和などは進めていくようで、必要な人材と不要な人材への政策があからさまに違うのは、この国らしい。
タグ:上海 ビザ
posted by からみもち at 02:03| 上海 | Comment(2) | TrackBack(0) | できごと・感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする